kazasiki's blog

プログラミングとかVRゲームとか

Clash of Chefs VR レビュー

いわゆる料理シミュレータ系のゲーム。主人公はなんらかの飲食店の調理担当になって、客から来た注文に合わせて料理をする。注文から提供まで時間が空きすぎるとスコア上のペナルティがある。VRで似たゲームはCounter Fightが有名。

Counter Fightはアーケードスタイルのスコアアタックゲームで、特にステージクリアのような概念はなく、ゲームオーバーになるまでに稼いだスコアを競う形式だった。それに対してClash of Chefs VRはステージクリア型のキャンペーンモードを基本としてる。例えばハンバーガーショップであれば、最初はバンズと肉だけのシンプルなハンバーガーから始まって、徐々に間にチーズやケチャップを挟んだり、ダブルバーガーになったりする。さらに言えば、サイドメニューであるポテトやドリンクまで注文に混ざってくる。大抵は5~10人程度の注文を捌けばステージクリアになる。

Counter Fightの場合は、最初のチュートリアルで全ての料理の調理方法を覚えて本番に望む形式で若干導入に難があったが、その部分の負担がだいぶ緩やかになった。Clash of Chefs VRの場合は、新しい要素が追加されるときだけ、数秒程度の説明動画を見て、早速実践してみせることができる。最終的には少し複雑な注文を受けることになるが、少しずつ慣らしているのであまり負担に感じない。

またこのゲームの特徴として、調理台(作業スペース)が広く使えるという点がある。ある程度広い調理台があれば、加熱済みの肉をストックしておくこともできるし、ピクルスやオニオンを事前にカットして隅にためておくこともできる。肉が冷めるとか、調理台の衛生面などは気にする必要はない。

このゲームには、提供頻度の高い食材や加工に時間がかかる食材などを予め把握しておいて、効率よく提供できるように工夫する楽しさがある。こういったゲームでは後半になるほど作業速度を求められ、プレイが慌ただしくなるのは一種の宿命なのだが、このゲームの場合は細かい作業上の工夫によってそれをある程度軽減することができる。こういった体験ができるゲームは意外に珍しい。

惜しいところでいうと、全体的に演出が簡素すぎるところだろう。プレイしていると、飲食店の調理担当というよりは工場のライン作業者になったように感じる。注文はプレイヤーの目の前の画面に表示され、提供も目の前のスペースに完成した料理を置くだけだ。客が美味しそうに料理を食べる姿を見ることはないし、料理を運んでくれるウエイター/ウエイトレスも実に淡々と料理を運んでいく。

何度も比較に出して申し訳ないが、Counter Fightでは客のリアクションをかなりコミカルに作り込んでいて、それがゲームの楽しい雰囲気をかなり押し上げていた。なんだったら、ただプレイヤーを応援するだけのマスコット(?)までいた。ゲームの内容的にどうしても淡々と作業してる印象になってしまうので、それを軽減させるような工夫をもっと入れても良かったのではないかと思う。

全体的に見れば操作感も良く、よくできた料理シミュレータゲームだと思う。VR酔いの心配もないし、難しい操作もまったくない。その反面、グラフィックは全体的にチープだし、演出も控えめなので、VRならではの驚きのようなものは乏しいかもしれない。黙々と手を動かしながら作業を効率化していくことに喜びを見出せる人には是非オススメしたい一作だ。

2021/11/10 追記

長くプレイすると、また別の感想を持ったので少しだけ追記。

このゲームはVRコントローラの制限もあって精密な操作を完全に捨てていて、それが故にアクションゲームとしての奥行きを失ってる気がした。「俺の料理」のようなゲームを遊んだことがある人はわかると思うが、アナログスティックの操作であればかなり厳密な操作も可能なので、例えば「ちゃんと等間隔で千切りできているか」のような判定をしてボーナスポイントを付与するといった要素を入れられる。そういったことはこのゲームでは全然されていない。これはCounter Fightなどでも同じで、VRではコントローラを空間上で動かしてるとはいえ触覚のフィードバックがあるわけではないので、物に触れる際の細かい操作を要求するのはまだまだ難しいことに起因している。